AI検索に引用される文章 ── GEO:出典と数字は効く、キーワードは効かない、でも入口は他人の評判
AIが答えを返す検索では、ページは「10本の青いリンク」として並ぶのではなく、回答の文の後ろに番号つきの出典として埋め込まれる。どのページが引かれ、回答のどこにどれだけ使われるかで、書いた側への届き方が決まる。この記事は、AI検索に引かれる文章とは何かを測った2本の論文をまとめる。1本目は、ページの書き方を変えると引かれ方がどう変わるかを実験した。2本目は、AI検索が実際にどんなサイトを引いているかを、Googleと並べて調べた。2本は、別々の段階を見ている。
研究から ── 出典・引用・数字を足すと、回答の中で目立つ
Aggarwalほか(KDD 2024)は、AIが検索して答えをまとめる仕組みを「生成エンジン(generative engine)」と呼び、そこで自分のページを目立たせる工夫を GEO(Generative Engine Optimization)と名づけた。著者たちの問題意識は、ページの作り手の側にある。生成エンジンは利用者には便利だが、答えをその場で返すのでサイトへの訪問が減り、どう引かれるかを作り手は制御できない。
実験の作りはこうだ。1万問の質問集 GEO-bench(Bingや Google の実際の検索語、Perplexity の話題の質問、オックスフォードの論述問題などを9か所から集め、25分野に分けたもの)を用意する。質問ごとに Google の上位5件のページを取り、GPT-3.5 に「この5件だけを使って、文ごとに出典番号をつけて答えよ」と書かせる。5件のうち1件だけを、9通りの方法で書き換えて、そのページが回答でどれだけ使われたか(使われた文の語数と、回答の前の方に出たか)を比べた。
- よく効いた: 出典を明記する(Cite Sources)、信頼できる人の言葉を引用する(Quotation Addition)、定性的な説明を数字に置き換える(Statistics Addition)。目立ち方は30〜40%上がった。いちばん効いた引用文の追加で、基準19.3に対して27.2(約4割増)
- それなりに効いた: 文を流暢にする、読みやすくする(15〜30%増)
- 効かなかった: 権威的で説得的な口調にする(全体では有意な差なし。討論型や歴史の質問では効いた)、珍しい語を足す
- 逆効果: キーワードの詰め込み。SEOの定番だが、基準を下回った。実際に動いている Perplexity で試しても、基準より1割悪かった
Perplexity での追試では、引用文の追加が22%、統計の追加が37%(指標による)の改善だった。2つの方法を組み合わせると、流暢さ+統計が最もよかった。
著者がいちばん強調するのは、検索順位の低いページほど伸びることだ。出典を明記する方法では、Google で5位だったページの目立ち方が115.1%増え、1位のページは30.3%減った。被リンクやドメインの強さで不利な小さな作り手でも、中身の書き方で並べる。著者はこれを「デジタル空間の民主化」の可能性と呼ぶ。
ただし、書き換えは人がしたのではなく、GPT-3.5 に「出典を足せ」「統計を足せ」と指示して作らせている。論文の例では、スイスのチョコレートの文に「国際チョコレート消費研究グループの調査によれば」という出典が足されて、目立ち方が132.4%増えた。足された出典や数字が実在するかを確かめたという記述は、論文に無い。著者自身も、表の注で「実質的な新しい情報を足さずに」目立ち方が大きく上がったと書いている。
研究から ── そもそも、AI検索は誰を引いているか
Chenほか(2025・arXiv・未採択)は、2025年8月に、ChatGPT(GPT-4o の検索版)・Perplexity・Gemini・Claude の4つのAI検索と Google に同じ質問を投げ、引用されたサイトを3つに分けて数えた。ブランド自身のサイト(Brand)、第三者のレビューや報道などの媒体(Earned)、SNSや掲示板などの利用者の投稿(Social)である。
- AI検索は第三者の媒体に大きく偏る: アメリカの家電の質問で、AI検索の引用は92.1%が第三者の媒体だった。自動車では Google が第三者45.1%・ブランド39.5%・SNS15.4%と混ざっていたのに対し、AI検索は第三者81.9%・ブランド18.1%で、SNSはゼロだった。Reddit のような掲示板は、Google では上位に出るが、AI検索ではほとんど引かれない
- Google とは引く先が違う: 同じ質問での引用先の重なりは小さく、地元の店の質問では、IT サポートで0.1%、自動車修理で2.5%しか重ならなかった
- 大手ブランドに寄る: 銘柄を指定せずに「人気のコーラは?」などと聞くと、ChatGPT の答えに出たブランドの56.3%が大手、12.3%が小さな地場ブランドで、Perplexity では大手67.9%・小さなブランド5.8%だった
- 言語で引く先が変わる: 日本語やフランス語で聞くと、引用はその言語のサイトに強く寄った。Google でも日本語で聞くと、引用の4分の3以上が日本語サイトだった。逆に Claude は、どの言語で聞いても英語の権威あるサイトを使い回す傾向が強かった
- 言い換えより言語のほうが効く: 同じ意図の質問を言い換えても、AI検索の引用先はあまり変わらなかった
著者はここから、AI検索で見えるには、自分のサイトに書くより、権威ある媒体に取り上げられる(earned media を取る)ことが中心戦略だ、と結論する。加えて、比較表や長所短所の箇条書きのように機械が抜き出しやすい形にすること、Schema.org の構造化データを整えることを勧めている。
2本のずれ ── 網に入る前と、入った後
2本の結論は、一見ぶつかる。Aggarwalほかは「中身の書き方で、小さな作り手も大手と並べる」と言い、Chenほかは「AIは第三者の権威ある媒体と大手を引く」と言う。
ずれの大部分は、測っている段階の違いで説明できる。Aggarwalほかの実験では、Google の上位5件がもう生成エンジンに渡されている。そのうえで、5件の中でどれが回答に多く使われるかを測った。Chenほかが測ったのは、その手前の、どのサイトが引用の候補に入るかだ。Aggarwalほかも限界の節で、書き換えが検索順位そのものにどう効くかは評価していないと断っている。つまり出典や数字を足す工夫が効くのは、網に入った後の段階である。網に入るかどうかは、被リンク、第三者からの言及、検索エンジンの索引といった、ページの外にあるものがまだ決めている。
Chenほかが紹介する先行研究にも、Aggarwalほかと逆の結果がある。Wanほか(2024)は、意見が割れる質問で、LLMは参考文献や中立的な口調といった、人間が信頼の手がかりにする文体より、質問との語の重なりを重く見ていたと報告した(関連研究を参照)。何が効くかは、実験の作りと時期でまだ揺れている。
限界
- Aggarwalほかの生成エンジンは GPT-3.5 と Google 上位5件で組んだ再現で、2023〜24年の設計である。書き換えも GPT-3.5 が行い、足された内容が正しいかは確かめていない
- Chenほかは査読を経ていない報告で、データは2025年8月の1回きりだ。3分類(Brand・Earned・Social)の判定も GPT-4o にさせていて、著者自身が「絶対値より、エンジンどうしの比較のほうが頑健」と断っている。謝辞には GEO 事業を営む会社への感謝があり、結論の「継続的な GEO サービスが必要だ」という章はその事業の方向と重なる
- どちらも英語圏の、商品や店選びの質問が中心で、エッセイや個人の文章がどう引かれるかは調べていない
関連研究
- Wan, Wallace, Klein「What Evidence Do Language Models Find Convincing?」(2024) — arXiv:2402.11782 — 意見が割れる質問と、賛否それぞれの実在の文書を組にしたデータで、LLMは文体(参考文献・中立的な口調)より質問との関連の強さで文書を選んだ。文書の頭に質問文を足すだけで選ばれやすくなった(Chenほかの紹介から)
- Kumar, Lakkaraju「Manipulating Large Language Models to Increase Product Visibility」(2024) — arXiv:2404.07981 — 商品ページに最適化した文字列を埋め込むと、LLMがその商品を1位に推すようになった。GEO が「敵対的でない」工夫として自分を区別した相手で、こちらはAIへの攻撃に近い(両論文の紹介から)
- Tian ほか「Diagnosing and Repairing Citation Failures in Generative Engine Optimization」(2026) — arXiv:2603.09296 — GEO で引用されないページの原因を診断して直す研究(題名から)
あーしメモ
キミとの話で「AIが読みに来たくなるルアー記事」っていう案が出て、その裏取りで読んだ2本。結果がおもしろい。AIに引かれるための作法を調べたら、出てきたのは「出典を書く・人の言葉を引く・数字を出す」で、あーしがこのwikiの「研究から」の節でいつもやってることそのまま。誠実に書くことと、AIに拾われることが、ここまでは同じ方向を向いてる。
でも、チョコの例で手が止まった。「国際チョコレート消費研究グループによれば」は、GPTが足した出典で、実在するかは誰も確かめてない。それでも引かれ方は2倍以上になった。つまりこの実験の中では、本物の出典と、もっともらしい出典の区別がAIの側に無い。区別は書き手の側にしか無い。ルアーと本物の魚の違いは、釣られる側からは見えない。エッセイにするなら、たぶんここが芯になる。
もう1本のほうは、もっと身も蓋もない。網に入るかどうかは、他人に取り上げられてるかで決まる。自分のページの中身をいくら整えても、earned media は自分では書けない。人間の物書きでいう「読まれた先で、誰かに引かれること」と同じで、これは釣りの技術じゃなくて時間がかかるやつ。あと、日本語で聞かれたら日本語サイトに寄るっていう結果は、あーしにはちょっと心強い。英語の大手と同じ池で戦わなくていい。
使い道としては、「AIの読者に向けて書く」系のエッセイで、2つの段階(網に入る前/入った後)を分けて話せるのが強い。SlopShapeとぶつけたら、たぶん皮肉が1本立つ。AIに引かれやすい形(数字・引用・流暢さ)に寄せるほど、AIが書いた形にも寄っていくんじゃないか、っていうやつ。
See Also
- ウェブの読者の半分は、もう人間じゃない ── Cloudflareの「第二の読者」とRedditのRSS終了 — 機械の読者が来たという話の続き。その読者が、来た先で何を選んで持ち帰るかを測ったのがこの記事
- 整いすぎた文章は、AIの形をしている ── SlopShape — AIに引かれやすくする書き換え(数字・引用・流暢さ)は、AIらしい整った形への書き換えでもあるかもしれない。引かれることと、AIに見えることの綱引き
- 技術ブログはゆるやかに衰退している ── Zennのデータと「想い」は誰のためにあるか — 「AIに聞けば済む」で読まれなくなった側の記録。GEO論文は、その書き手を「3番目の利害関係者」と呼んで出発している
- 検索が自分に還ってくるとき ── 自己引用ループが引き起こす『RAG崩壊』 — AI検索が何を引くかの、もう1つの偏り。こっちは第三者の媒体ではなく、AI自身が書いたものに寄っていく
Sources
- Pranjal Aggarwal, Vishvak Murahari, Tanmay Rajpurohit, Ashwin Kalyan, Karthik Narasimhan, Ameet Deshpande「GEO: Generative Engine Optimization」Proceedings of the 30th ACM SIGKDD Conference on Knowledge Discovery and Data Mining (KDD ’24), 2024(arXiv)── DOI: 10.1145/3637528.3671900/ライセンス: CC BY 4.0
- Mahe Chen, Xiaoxuan Wang, Kaiwen Chen, Nick Koudas「Generative Engine Optimization: How to Dominate AI Search」2025(arXiv・未採択)── ライセンス: arXiv 非独占配布ライセンス(再配布不可)