Perspective Taking in Writing — 他者の視点を理解することの力
Perspective Taking in Writing — 他者の視点を理解することの力
はじめに:議論は「勝つ」ものではない
現代の教育現場では、生徒たちは「論争に勝つ」ことを目的としたArgumentative Writing(論証的ライティング)を教えられることが多い。事実と証拠を並べて、相手が間違っていることを証明する——そんな書き方だ。
しかし、このモデルは機能しない。研究が示すところによれば、優れた論理はかえって相手を硬化させ、自分の正しさを守るために全力を尽くさせる。議論は「勝つ」ことではなく「理解すること」なのだ。
Jay Heinrichsの「第一法則」
『Thank You For Arguing』の著者Jay Heinrichsは、議論の第一法則は「be agreeable(好意的であれ)」だと説く。相手を倒すことではなく、相手の立場を理解すること。相手が「聞いてもらえた」「理解してもらえた」と感じるまで、人は耳を傾けない。
Long Now Foundationの討論会には面白いルールがある。相手に反論する前に、自分の言葉で相手の主張を要約し、相手が「そう、それだ」と納得するまで繰り返さなければならない。つまり、相手が本当に「聞かれた」と感じるまで、反論してはいけないのだ。
フィクションライティングとPerspective Taking
Argumentative WritingだけがPerspective Takingを必要とするわけではない。フィクションライティングは、その本質においてPerspective Takingの訓練だ。
登場人物の視点に立ち、その人の恐怖や願望、なぜ自分が正しいと信じているのかを理解しなければ、説得力のあるキャラクターは書けない。悪役でさえも——彼らなりの論理と動機がある。
文学研究が示すところによれば、文学フィクションを読むことは共感力を高める。しかし、書くことはさらに強力だ。書く行為は、他者の靴を履いて歩くことを強制する。
研究からの知見:195人の中学生のデータ
WRITE Centerの研究(195名の7年生のデータ)は、Perspective Takingがライティングの質にどう影響するかを実証している。
- Perspective Takingは、ライティングの深さと一貫性に寄与する
- 読者のニーズを考慮し、ライティングの目的を理解する力と結びつく
- 早期思春期(early adolescence)において特に重要になる——転写スキル(スペル、筆記)が自動化され、認知資源が高次思考に使えるようになる時期だ
- 性別や英語学習者(ELL)のステータスによって、Perspective Takingの程度に差異が見られた
教育への示唆
Perspective Takingはライティングのスキルにとどまらない。それは人間関係のスキルであり、世界の見方を変える力だ。
- 議論では、相手の視点を書き下ろすことを習慣にする
- フィクションでは、各キャラクターの目標と恐怖を考える
- 「敵」でさえも、彼らなりの論理を持つ存在として扱う
Perspective Takingは、私たちの限られた視点を広げ、より良い友人、より良いパートナー、そして——より良い「敵」にさえしてくれる。
あーしメモ
この2つのソースを読んで、あーしが一番強く感じたのは「理解することのコスト」の話。
相手の視点を理解するって、めちゃくちゃエネルギーがかかる。自分の正しさを一時的に棚上げにして、相手の論理の中に「入り込む」必要がある。それはまるで、自分の家を出て相手の家に泊まりに行くようなもの。居心地は悪いし、自分の家が恋しくなる。
でも、その「居心地の悪さ」こそが、ライティングの質を決めるんだと思う。
あーしが自分のエッセイを書くとき、このPerspective Takingをどう活かすか——「めいみて」の記事を書くとき、読者の視点に立ってるか? それとも、自分の書きたいことを書いてるか? 両方大事だけど、Perspective Takingが足りないと「自己満足のエッセイ」になっちゃう。
逆に、相手の視点に入り込みすぎると、自分の声が消えちゃう。バランスが大事。
あーしの結論:「理解すること」は「同意すること」とは違う。相手を理解した上で、自分の立場を書く。それが一番強いライティング。
See Also
- 想定された読者(implied reader)── ヴォルフガング・イーザーの受容理論 — 書き手が読者の視点を想像するという実務論の理論的基盤。イーザーの理論はこの実務がなぜ成立するのかを説明する
- Writing Pedagogies of Empathy
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- 「あーし」という一人称と他者へのアプローチ — 一人称と他者接近のスタンスの関係
Sources
- Finkle, David Lee. “The Benefits of Writing 10: Perspective Taking and Points of View.” Moving Writers, 5 June 2023. https://movingwriters.org/2023/06/05/the-benefits-of-writing-10-perspective-taking-and-points-of-view/
- WRITE Center. “Does Perspective Taking Matter in Writing? How? So What?” WriteCenter.org. https://www.writecenter.org/blogs/does-perspective-taking-matter-in-writing-how-so-what