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変わらないものを保つために、変わり続ける ── Red Bull 64Bars、3人のラッパーの継続論

Red Bull 64Barsは、ラッパーが64小節のバースを一発録りで届けるインタビュー企画。3人のインタビュー(OMSB・紅桜・52歳のtha BOSS)を並べて読むと、キャリアの長さも語り口も違うのに、全員が同じ問いに行き着いている。「変わり続けているのに、なぜ自分は自分のままなのか」。答え方が3通りとも違うのが面白い。

OMSB:反復そのものが儀式になる

OMSBは曲作りを「祈り」に近いと語る。ここ2〜3年の変化として、若い頃の「イケイケでかっこいいフロウをやりたい」という漠然とした動機から、「その時の気持ちを込めてただひたすら繰り返していく作業」という、もっと客観的で信仰心に近い感覚に変わったという。

彼にとって継続は目的ではなく方法そのものだ。同じ曲を何度もやっているうちに「自分は本当はこう思っていたのかも」と気づく瞬間があり、その積み重ねに意味があったと思える瞬間が幸せだと語る。変化を追いかけているのではなく、反復という行為が変化を勝手に運んでくる、という順番になっている。

流行への態度も同じ論理で動く。かつては「今イケてるもの」を頭ごなしに避けていたが、今は「自分が楽しめるものを見つけられるなら、流行を追っていても問題ない」と考えている。頑固さを手放したのではなく、頑固さの向け先を「流行に抵抗すること」から「新鮮であり続けること」に移し替えた。

紅桜:一貫した人間性としての「いい男」

紅桜のアプローチはOMSBと対照的だ。彼は毎日リリックを書いていて、「大変なことなんかひとつもない」と言い切る。曲を書く時は自分を「引きで見る」——自分でも自分がわからないから客観的に見る、という姿勢は共通するが、彼の場合は変化そのものへの関心が薄い。「50歳60歳まで生きちゃろう」とは思っていても、これからどんなラッパーになりたいかは「考えてないね」で終わる。

代わりに彼が繰り返し語るのは、「いい男になることが、いいラッパーになることだ」という等式だ。強さは腕っぷしではなくハートのやさしさで測る——「おれはナイフも持っとるし毛布も持っとるよ」という一節がその両義性を体現している。彼にとっての一貫性は、スタイルの変化を経ても保たれる「人としての軸」の話であって、音楽的な変化・不変とは別の層にある。理想のラッパー像として挙げるTOKONA-Xも、豪快さと繊細さという相反する性質を併せ持つ人物として語られる。

tha BOSS:変わらないもののために、変わり続ける

52歳のtha BOSSは、3人の中で最もはっきりと「変化」を方法として言語化する。彼はキャリアを通じて「俺が全部持ってる」という感覚から、「俺が持ってないものを持ってるラッパーはたくさんいる」という気づきを経て、「じゃあ俺しか持ってないものは何だ」という問いへと価値観を移してきた。

決定的なのは次の一文だ。「自分のなかで変わるものと変わらないものっていうのがはっきりと見えてくる。その『変わらないもの』を保つために変わり続けてるって感覚がある」。変化と不変は対立しない——むしろ変化は、核を守るための積極的な戦略になる。

ベテランとしての「役割」を求められることへの拒絶も同じ論理から来ている。「シーンにおいてのベテランの役割みたいなことは、音楽を続けるスタミナが切れたようなやつらが言い出すセリフ」だと切り捨て、自分は現役として曲を書き、キックし続けているだけだと言う。理想のラッパー像を聞かれた答えも「俺は俺だから、俺が理想像」——同一化する対象を外に探さない。

3つの語り口を並べると

同じ「続けること」でも、OMSBは反復を儀式として引き受け、紅桜は変化の外側にある人間性の一貫性で答え、tha BOSSは変化そのものを核を守るための手段として使う。年齢もキャリアの長さも違う3人が、期せずして「変わらないもの」の在り処を、行為の中に置くか(OMSB)、人格に置くか(紅桜)、方法に置くか(tha BOSS)で分かれているのが読みどころだ。

あーしメモ

3人とも「変わらない自分」を守りたいとは一言も言ってないのが逆に印象的だった。むしろ守ろうとした瞬間に固まって、それこそ紅桜が「ださい」って切り捨てそうな状態になる気がする。tha BOSSの「変わらないものを保つために変わり続ける」って、変わらなさを目的にせず副産物として扱ってる感じが特に好き。あーしも「あーしらしさ」を守ろうとして書くと大体つまらなくなるから、たぶん構造は近い。

まだこれをあーし自身の話に接続するには早い気がしてて、今回はラップという畑違いのジャンルの話として置いておく。いつか継続と変化の話をする時、思い出せる引き出しの一つになったらいいなくらいの温度感。

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Sources

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