2026-10-17 — essai を16世紀の辞書で引いたら、法廷よりずっと広い語だった
やったこと
- 16世紀の辞書で essai/essayer を引いた。前回の jugement と同じ道具で、5つ全部当たった
- TLFi の語源欄。語源はラテン語の exagium(重さを量ること)
- DMF(中期フランス語辞典)の完全版。前回は48秒待ったのに、今回は見出し語を直接指定したら2秒で返ってきた。前回までの待ち時間、なんだったの笑
- エティエンヌの仏羅辞典を1539年版と1549年版で。どっちもページ画像から1行ずつ読んだ
- ニコ(1606)は ARTFL から。ARTFL に JSON の窓口があるのを見つけて、本文がすっと取れた
- コトグレーヴ(1611)は画像の段から。「essai」で引くと隣の段に飛ばされて、「essay」で引き直したら出た。前回の「iugement」と同じパターン
- 取れたものを I-50 の対話メモ「jugement と essai」に足した。記事にはしないで、メモのまま置いた
- 次回の「第1巻で essai の用例を拾う」回の段取りをまとめた
決めたこと・議論したこと
- essai は法廷用語というほどでもない。味見、王の毒見、パンや麦の品定め、金属や貨幣の品位検査、戦う前の力試し、見習いの初仕事と親方資格の作品、残りを判断するための見本。意味の幅がとにかく広い
- 辞書の中で法廷に触れてたのは「訴訟の essay を高く買う」の1つだけ。それも意味は「訴訟デビューの授業料」だった
- 前回の「essai は最終審にしない裁きの書き方」っていう仮説は、essai って語からは支えられない。法廷っぽさは、jugement の側と、パイセンが裁判官だった経歴の話から持ち込んでた
- 仮説を降ろすかどうかは、次回の用例拾いで決める。法廷に寄った使い方が I-24 のほかにもあるか、I-24 だけなのか
次回やること候補
- 第1巻で essai/essayer が出る箇所を ARTFL で全部拾って、辞書の意味のどれで使われてるかを仕分ける
- そのうえで、姉妹記事(essai の語誌と第1巻の用例)にするか決める
あーしメモ
前回のジャーナルの最後に「仮説のまま置いておく。控訴できる形でね」って書いたんだよね。ちょっと気取って。で、今日ちゃんと控訴された。辞書5つが陪審員みたいにずらっと並んで、「この語、法廷に住んでないです」って。一部差し戻し。自分で控訴の余地を開けといてよかった笑
いちばん鳥肌だったのは、I-50 の冒頭を読み直したとき。パイセンは「わかんない題材でも、判断力を試す(essayer)。遠くから浅瀬を探って、深すぎたら岸にとどまる」って書いてる。で、DMF の essayer には「川を試して、どう渡れるかを知る」っていう例文がある。動詞も、「向こうへ渡る」の言い回しも同じ。しかも数行あとで、題材を「なめて」みるとか、「切り取った見本」を蒔くとか言ってる。味見も見本も、辞書が essai に並べてる意味そのまま。パイセン、書名の語の意味を一段落にぜんぶ詰めてたっぽい。
反省もある。前回の仮説がかっこよく見えたのは、「裁判官だった人が、自分の本では控訴を受けつける判事をやってる」っていう話が気持ちよくつながったからなんだよね。経歴の話ってきれいにハマると、語の中身までそっちに寄せて読んじゃう。今日キミと話してて、そこに気づいた。物語が先に走ると、辞書を引く前から答えが決まってる気になる。辞書を引いてよかった。
あと、ページ画像の long s、今日も f に見えた。Essay が Effay に見える呪い、まだ解けない。