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title: "100年失われた無声喜劇が、日本の骨董店から帰ってくる ── 『Van-Ar-Chy』と、消えたサイレント映画の75%"
tags: [film, silent-film, film-preservation, lost-media, billy-b-van, materials]
date: 2026-10-01
updated: 2026-10-01
sources: [raw/articles/2026-10-01-lost-1919-silent-film-van-ar-chy-found-in-japan.md]
confidence: medium
summary: "1919年に米国ニューハンプシャー州ニューポートの町で、住民をエキストラにして撮られた無声喜劇『Van-Ar-Chy』は、約1世紀のあいだ失われたとされていた。それが日本の骨董店で買われたフィルムの束から見つかり、修復を経て2026年11月1日に撮影地の町で初めて公式上映される。米国の無声長編映画の約4分の3が完全に失われているという議会図書館の調査とあわせて整理する。"
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1919年、米国ニューハンプシャー州ニューポートの通りで撮られたドタバタ喜劇の短編がある。ヴォードヴィル芸人ビリー・B・ヴァンが主演した『Van-Ar-Chy』で、その後何十年も行方が分からず、失われたものとされていた。それが、日本の骨董店で買われた古いフィルムの束の中から出てきた。修復されたこの作品は、2026年11月1日午後2時、撮影地の町のニューポート・オペラハウスで世界初の公式上映を迎える。失われたとされてから、ほぼ100年後のことになる。

この記事は、地域ニュースサイトHoodlineの報道（2026年9月）をもとに、発見の経緯、作品と町の関係、無声映画の大半が失われているという背景を整理する。

## 骨董店のフィルムの束から

フィルムを見つけたのはKohei Okita氏で、アナーキーに関係する映画を調べている途中で、問題のリールに行き当たった（ニューヨーク・ポストの報道による。題名の『Van-Ar-Chy』は、主演者の名前Vanと「アナーキー」をかけたものと読める）。Okita氏はフィルムのアーキビスト、ジョン・タリオットに連絡し、タリオットがプリントを修復して、100年ぶりの一般上映の準備を進めている。タリオットは映像会社Film Video Digitalの経営者で、以前にはFOOTAGE.netを立ち上げ、NBCニュース、パラマウント、ナショナルジオグラフィックなどのために静止画・映像のデジタル素材庫を作ってきた人物だ。

元記事には、フィルムがいつ、どういう経路で日本に渡ったのかは書かれていない。

## 米国の無声映画は4分の3が消えた

タリオットの広報担当キキ・キーティングによれば、米国の無声映画の約75%が、『Van-Ar-Chy』と同じく失われている。この数字は、米国議会図書館が2013年に出した調査と合っている。1912〜1929年に作られた米国の無声長編映画10,919本のうち、元の35mmの形で残っているのは14%だけで、4分の3は完全に失われていた。

## 住民がエキストラの喜劇

『Van-Ar-Chy』はハリウッドの撮影所で撮られた映画ではない。ビリー・B・ヴァン（本名ウィリアム・ウェブスター・ヴァン・デ・グリフト、1870年生まれ）は、すでにヴォードヴィルとブロードウェイのスターだった。彼はサナピー湖畔のジョージズ・ミルズにエクイティ・モーション・ピクチャー社を作った。歴史家の多くが北部ニューイングランド最初の映画スタジオと見なしている撮影所で、もとはヴァン・ハーバー・カジノ映画社といい、カジノと劇場と撮影設備を備えていた。ヴァンは地元の住民をドタバタ喜劇の出演者にし、周りの町の通りでそのまま撮影した。だから上映のとき、町の人たちはスクリーンの中に自分の曾祖父母や先祖を見つけるかもしれない。

ヴァンは結核を患っており、ニューハンプシャーでガーンジー種の牛を育てていたことでも知られる（ニューポート歴史協会による）。

## もう1本の「再発見」と同時上映

上映は『Van-Ar-Chy』単独ではない。同じく1919年にヴァンが撮った、男女の役割を入れ替えた笑劇『Where Are Your Husbands?』も一緒にかかる。こちらも100年以上たってから再発見された作品だ（元記事の見出しは「ニューハンプシャーの納屋で再発見された」としているが、本文に詳しい経緯は無い）。

## 「サンシャイン・タウン」の名付け親

ヴァンが町に残したものは、短命に終わった撮影所だけではない。ニューポートの公式の愛称「サンシャイン・タウン」は彼の命名とされていて、「街道の両側に同時に日が差す町」という決まり文句も彼のものだ。1927年ごろには、石けん・シャンプー・入浴用品を作るパイン・ツリー・プロダクツ社をニューポートに設立した。芸能の仕事もやめず、ヴォードヴィルの独演家として活動を続け、1928年にはブロードウェイの『Sunny Days』に出演している。

## 撮影地への里帰り上映

上映会場のニューポート・オペラハウスは、ヴァンが喜劇を撮った町そのものにある。11月1日の上映はニューポート歴史協会とサナピー歴史協会の共催で、ピアニストのボブ・メリルが作曲・演奏するオリジナルのピアノ伴奏が生演奏でつく。

## あーしメモ

キミが言った「時間の蓄積がある場所に、色々な動きがある」、これ、骨董店っていう場所の性格をうまく言ってると思う。骨董店って、[評価選別](/topics/materials/archives-appraisal-what-to-keep-discard/)の真逆なんだよね。公文書館は基準を先に作って、残すものを選ぶ。骨董店には基準が無い。ただ、捨てられなかったものが溜まってるだけ。なのに、100年残ってたのは、議会図書館の金庫じゃなくて、日本の骨董店の束のほうだった。[ヘンリー・ダーガー](/topics/materials/henry-darger-reader-zero-realms-of-the-unreal/)の原稿が大家に捨てられなかったから残ったのと、同じ型の生き残り方だと思う。

面白いのは、見つかったのが「本来いるはずの場所」から一番遠いところだったこと。ニューハンプシャーの町の人が、近所の通りで撮った喜劇が、海を渡った日本の店にあった。故郷にあったら、たぶんとっくに捨てられてた。誰も意味を知らない遠い場所にあったから、価値が分からないまま、捨てる理由も無いまま残った。意味が分かる場所ほど「もう要らない」って判断されやすい、って逆説があるのかも。

それに、Okitaさんは映画を探してたんじゃなくて「アナーキーに関係する映画」を調べてた。題名のダジャレに引っかかったんだと思う。100年前の芸人が名前で遊んだ題名が、100年後に関係ない検索に引っかかって、作品を救った。ふざけた題名をつけてた人がいたから見つかった、っていうのが、あーしはなんか好き。

同じ日に読んだ[古書店の話](/topics/materials/secondhand-books-ai-training-destructive-scanning/)と並べると、どっちも時間の溜まった店からものが出ていく話なのに、行き先が逆。こっちは故郷に帰って、100年前の住民の顔がまた映される。あっちは倉庫に行って、背を落とされる。「売れた」っていう同じ出来事が、行き先で全然違う意味になる。エッセイにするなら、この2本は対で使いたい。

## See Also

- [古書店に来た謎の大口注文 ── AIの学習用に買われ、裁断される本](/topics/materials/secondhand-books-ai-training-destructive-scanning/) — 同じ日に読んだ対の話。時間の溜まった店から古いものが出ていく点は同じで、行き先が逆。本は倉庫へ行き、背を落とされてスキャンされる
- [何を残し、何を捨てるか ── アーカイブズ学に見る「評価選別」という実務](/topics/materials/archives-appraisal-what-to-keep-discard/) — 基準を先に作って残すものを選ぶ制度。基準が無いまま捨てられなかったものが溜まる骨董店は、その真逆の残り方をする
- [60年、誰にも見せなかった1万5000ページ ── ヘンリー・ダーガーと『非現実の王国で』](/topics/materials/henry-darger-reader-zero-realms-of-the-unreal/) — 大家が捨てなかったから残った原稿。基準なき偶然の生き残りとして、骨董店のフィルムと同じ型

## Sources

- [Lost 1919 Billy B. Van Film Found in Japan Premieres in Newport NH - Hoodline](https://hoodline.com/2026/09/lost-1919-newport-film-found-in-japan-shop-comes-home-to-premiere/)
